前編では、SNS黎明期からコミュニティ活用が注目され始めた背景を振り返りました。後編では、コミュニティ施策をどう差別化し、ロングヒットへとつなげていくのか。支援会社の視点も交えながら、さらに深掘りしていきます。

コミュニティの“価値”を高めるために

武内
今では「コミュニティ運営」はゲーム運営で当たり前になっていますが、実際には「公式アカウントを動かすだけ」で終わっているケースも少なくないですよね。そこをもう一歩進めるには、どんな取り組みが必要でしょうか?

佐藤基
ゲームを構成する要素は、「ゲーム」「プロモーション」「コミュニティ」の3つあります。この3要素のユーザー体験の差別化がヒットの鍵になってます。お話してきた通り、少し前はコミュニティ施策が有効な差別化要素になりましたが、今は「コミュニティ」一周した感があって、改めて「ゲーム」で差別化しなきゃいけなくなってるフェーズに来たなと。きっとそこからまた、「プロモーション」で差別化する、「コミュニティ」で差別化する、或いは別の何かで、と差別化の工夫は続いていくんでしょうね。

武内
なるほど。確かにそういった時流の変化は感じますね。

佐藤基
とはいえ、今コミュニティでできることはいっぱいあると思うんですよね。例えばDiscordってまだ工夫の余地があるよねとか。ただ、「点の施策」だけ追いかけてると、結局他のタイトルと同じことすることになっちゃいますよね。

武内
改めてお伺いしたいですが、コミュニティ施策の価値を高めるために必要な要素って、何だと思いますか?

佐藤基
コミュニティ運営者が“タイトルの代表”という気持ちで取り組むことが最も大きいと思います。コミュニティはユーザーさんとの距離が近く、きちんとユーザーの声に向き合っている姿勢が見えると「ユーザー自身もこのゲームをもっと良くしたい、盛り上げたい」と思ってくれるんですよね。だからこそ、プロデューサー自らがユーザーの前に出てコミュニティと向き合えているタイトルは、やっぱり成功事例が多いと思います。

弐狐
実際、ファンの方に「このコミュニティは他と違う」と思ってもらうためには、運営がしっかり責任を持って発信することが欠かせないですよね。

武内
僕たち NAVICUSは、クライアントさんのコミュニティ運営を請け負う時、「タイトルの代表」として、クライアント担当者の誰よりもユーザーを理解し、関わりを持つことを意識づけてます。ただ、企業ごとに守らなきゃいけない情報とかラインもあるので、その折り合いをどうつけるかが難しくもありますね。

佐藤基
「タイトルの代表」として動くことは、簡単な仕事ではないと思うんですよ。もっと言うと、それだけの覚悟も責任がなければ良いコミュニティは生まれないと思うんですよね。その覚悟と責任を持って向き合ってくれるのが、NAVICUSのポリシーでもあると思うんですけど。それは武内さんがDeNAにいた時からそうなんで。

オウンドコミュニティとインセンティブ設計

弐狐
SNSはどうしてもアルゴリズムに左右されがちなので、オウンドメディアや独自プラットフォームでコミュニティを作る動きが広がっていますよね。Discordをカスタマイズしてイベントをやるとか、コミューンのようなサービスを使うとか。

佐藤基
そうですよね。今後のコミュニティ施策を考えるヒントが3つあると思ってるんです。

ひとつが「ゲーム内のコミュニティ」。ゲーム内のコミュニティって、まだ進化の余地があるんじゃないかと思うんですよね。ずっと前からギルドや掲示板など存在はしていますが、SNS時代に伴ってその進化が止まってるかもなと思ってて。ゲーム内コミュニティに差別化のヒントがありそうです。

次が「オウンド&カスタマイズ」って呼んでいるのですが、SNSコミュニティって、自分たちでプラットフォームを運営しているわけではないのでアンコントローラブルなことが多いじゃないですか。例えば投稿がフォロワー全員には届かないとか。そのため自分たちでコントロールできるオウンドメディアを使ってコミュニティを作る。SNS上だと全員が同じ機能を使う必要がありますが、オウンドメディアなら独自機能で差別化することもできるんじゃないかなと。

最後はやっぱり「インセンティブ」ですね。コミュニティに入って活動することに、より有効なインセンティブが必要だなと。その点で最近Web3系ゲームのコミュニティがとても参考になります。とてもコミュニティの熱量も高く、活動的です。これはインセンティブの存在が絶対無視できないと思うんですよ。インセンティブはこれは金銭的なものじゃなくても色んなインセンティブの可能性があるはずで、検討していきたいと思ってます。

弐狐
「ここにいると特別な体験ができる」というワクワク感がコミュニティを活性化させるんですよね。大きなギルドイベントの開催とか、ユーザーさん自身が企画に参加できる権利なども面白い。昔のオンラインゲーム文化を、いまの技術やSNSを組み合わせて拡張できる可能性があると思います。

“ゲームを盛り上げる”という原点

武内
最後に、これからのゲームコミュニティやマーケティング施策について、何かメッセージがあればお願いします。

佐藤基
さまざまなコンテンツの競合が増えて、すぐにヒットタイトルを作るのは難しい時代だと言われていますが、だからこそ「ゲームとして面白さを追求すること」「プロモーションで目立つ工夫をすること」「コミュニティをユーザーと一緒に育てていくこと」の三つが重要だと思います。コミュニティが当たり前の存在になったからこそ、その先の未来を考えたいですね。

弐狐
私としても、「ユーザーさんと直接つながる場」がコミュニティの最大の強みだと思うので、運営チームがそこをしっかり活かせるようにお手伝いしていきたいです。

武内
僕も同じ気持ちです。ユーザーとの距離が近くなるほど、「このゲーム最高!」って声が自然に広がりますし、そこに一番の可能性を感じています。今後もクライアントさんと一緒に、そういった場を作り上げていきたいですね。

後編まとめ

前編では、DeNAに在籍していた時代を起点にSNS活用・コミュニティが注目され始めた背景を振り返り、後編では「コモディティ化した今だからこそ必要な差別化のヒント」や「支援会社としてのスタンス」などをお伝えしました。
コミュニティ施策は一見すると当たり前になりつつありますが、まだまだ工夫できるポイントは数多く存在します。これからも、ゲームが長く愛される仕組みづくりを考え続けることが大切なのではないでしょうか。

対談・構成

株式会社MOTTO
代表取締役 佐藤 基

2011年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社後は一貫してモバイルビジネスのマーケティングを担当。2018年に独立して株式会社MOTTOを設立。主にモバイルゲームやアプリのマーケティング戦略の立案と実行を支援。特にスマートフォンゲームのマーケティングは黎明期から現在まで10年以上経験し、これまでにマーケティングとして関わったタイトルは「逆転オセロニア」など100タイトルを超える。コミュニティマーケティングサービス「Rooot」も提供。2024年からゲームマーケティングに特化したビジネスイベント「GAME FUTURE SUMMIT」を主催。 2025年6月4日には「GAME FUTURE SUMMIT 2025」を開催予定。

株式会社NAVICUS
代表取締役 武内一矢

早稲田大学卒業後、コミュニティサービス運営のITベンチャーを経て、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。SNSマーケチームの立ち上げを担う。その後、ふるさと納税ポータルサイト大手「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンクでのマーケティング責任者などを経て、2018年、コミュニティ・SNSマーケティング支援を行う株式会社NAVICUSを設立、代表取締役に就任。2022年10月、九州を中心にWebマーケティング支援を行う株式会社NAVICUS九州のCMOに就任。

株式会社NAVICUS
コンサルティングDivision ドゥSection マネージャー 弐狐

株式会社KADOKAWAにて、アーケードゲームの公式プレイヤー兼、攻略記事制作に従事。
株式会社ディー・エヌ・エーでは、広報として社外向けのプレスリリースの制作に3年従事。また、SNS運用として、”人格運用”をメインに多種多様なキャンペーンの企画推進、顧客リレーション強化を目的としたプロジェクトオーナーを担当。
現在NAVICUSにて、ゲームアプリのSNS人格運用や人気TV番組のSNS運用を担当。
SNS運用の枠から飛び出して、演者としてゲーム内のCVを担当するほか、生配信やイベントにも出演している。

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