
NAVICUS武内(以下、武内)
今回は、株式会社MOTTOの代表取締役・佐藤基さんをお招きして、「ゲームマーケティングの変遷とコミュニティの可能性」というテーマでお話します。基さんとは、僕がDeNAに在籍していた時からの長い付き合いで、当時いろんなスマホゲームタイトルのマーケティングに携わってきました。
まずは基さんご自身の自己紹介と、今やっている事業内容をお聞きできればと思います。
MOTTO佐藤(以下、佐藤基)
よろしくお願いします。僕も過去にDeNAという会社に勤めていて、そこで武内さんが入社する場面に関わり、その後一緒にお仕事も経験しました。今は株式会社MOTTOという会社を立ち上げて、ゲームを中心としたサービスのマーケティング支援を行っています。
武内
ありがとうございます。また今回、同じく元DeNAで、現在NAVICUS所属の弐狐にも参加してもらってます!
弐狐
はじめまして、NAVICUSの弐狐です! 私はゲームエンタメ業界のご支援に特化したセクション「ドゥ」のマネージャーを務めています。今回お話できることが楽しみです!
DeNA入社当時の想いと “スピード感”
佐藤基
武内さんがDeNAに入社されたのって、2015年でしたよね?
武内
はい、2015年の2月です。なので、基さんと出会ってもうすぐ10年になるんですよね。
佐藤基
そうそう。武内さんに内定が出た後に、一緒に働きませんか?って武内さんへアトラクトの電話したのをよく覚えてます。2014年の忘年会の最中に抜け出して話してました(笑)。
武内
僕もあの時の電話はすごく印象に残っています。DeNAって本当にスピード感がすごい会社なのでついていけるかなと思ったのと、初転職でもあったので、当時は飛び込むのに少し迷いもありました。ただ、結果的にあのタイミングで決めて良かったと思います。
弐狐
私も後に武内さんがDeNAで作ったチームに所属していたので、入社当時の成り立ちのお話を聞けるのは感慨深いです!
ゲームマーケティングにおけるSNSの変遷
佐藤基
2015年ごろのSNS活用は、ゲーム業界に限らず「Twitterが本格的にブレイクし始めた」ぐらいの空気感で、InstagramやYouTubeもまだあまり大きくは伸びてない段階でしたよね。
武内
そうですね! ましてや、昨今ゲーム業界で注目されてるTikTokやDiscordは、やっと生まれたかどうかの時期だったかと。今となっては、SNSがマスメディアに匹敵する影響力を持ち、活用の必然性が段違いに上がったように思います。
佐藤基
そう、SNSは単純なプロモーションではなくユーザーコミュニケーションの要素が強いと思いますけど、コンシューマーゲームではプロデューサーや広報担当者などが記事やイベントに登場するなど、当たり前にユーザーと向き合うのが文化だったのに対して、当時のスマホゲーム業界はユーザーコミュニケーションの意識がまだ弱かった。
弐狐
それに加えて、昔のソーシャルゲームはリリースから短期集中プロモーションでガッと展開していく印象が強かったんですけど、市場が成熟するにつれてロングヒットさせるにはユーザーとのやり取りで関係性を作っていくことがすごく重要になってきましたよね。
武内
2015年頃の状態を振り返ると、SNS活用で成功していたのは、ネットに強い会社よりむしろ、オフライン接客に軸足がある業界だったんですよね。無印良品、ローソン、ソフトバンクなどなど。もともと接客文化がある会社が、SNSでも変わらず顧客と向き合っているという。
佐藤基
スマホゲーム業界は急激に立ち上がった業界で、その辺をすっ飛ばしてきたから、ユーザーコミュニケーションのやり方が分からなかったんですよね。
“コミュニティ”という新たな軸
弐狐
そのなかでもDeNAは、テレビCMとX(旧:Twitter)を連動させたキャンペーンなんかを積極的にやってる印象でしたけどね?
佐藤基
確かに積極的に取り組めてはいましたが、初期のSNS活用は新たなユーザを獲得するためのプロモーションが目的でした。そこから、ゲームの面白さだけだと売れない時代になってきて、差別化要素の一つとしてユーザーとのコミュニケーションやコミュニティが注目されるようになったのかと。
武内
SNSが当たり前になると、ただ情報を流すだけじゃ埋もれがちで、ユーザーさん同士が集まって盛り上がる場をどう作るかが重要になった。僕が当時担当していた戦国ゲームタイトルでは、足軽に扮した広報キャラクターがX(旧:Twitter)を運用して毎日ユーザーと直接対話して、日々ゲームへの要望を募ってました。あとはゲーム内に登場するキャラクターが期間限定で公式X(旧:Twitter)アカウントを運用する「アカウントジャック」という手法も、目を引く施策として注目を得られていました。
こういった施策が有効かは、タイトルの特性やターゲットユーザー像、ひいては会社のカラーによって変わってくると思うけど、その点、色んな会社に関わってる弐狐はどう思います?
弐狐
私も実際、いろんな会社さんのご支援をする中で、「コミュニティの色」って本当に会社さんやタイトルごとに違うなと感じます。意思決定の仕方やスピード感、何を良しとするかも全然違います。だから画一的なセオリーはなく、エンドユーザーと向き合い続けて、どうやったらもっとタイトルを楽しんでもらえるか悩みながら戦略を練っていくのが本質だと感じてます。
今後のコミュニティはどう進化していく?
佐藤基
今は「ゲーム公式コミュニティを作る」こと自体は珍しくない時代ですし、多くの会社がX(旧:Twitter)や Discord を活用していますよね。ある意味コミュニティを持つこと自体が“コモディティ化”しつつあるからこそ、改めてゲームの中にコミュニティの仕組みを充実させたり、SNSではない独自のオウンドメディアを構築したり、新しいインセンティブを用意したりなど、いろんな工夫が必要になってくると思います。

武内
NAVICUSでも、SNS だけでは拾いきれないユーザーを集める“オウンドコミュニティ”を提案する機会が増えています。SNSプラットフォームのアルゴリズムに左右されにくいし、運営側でコントロールしやすいのは強みですね。あとはインセンティブ設計も大事になってきてると思います。
弐狐
ユーザーさんが「そのコミュニティに参加すると、他にはない体験ができる」と感じるかどうかがポイントですよね。ギルド文化やファンコミュニティの良さを、新しいプラットフォームや仕組みで広げていけると面白いです。
前編まとめ
ここまでが前編。DeNAに在籍していた時からの関係を振り返りつつ、SNS活用とコミュニティ施策の黎明期からの変化についてお話してきました。
後編では、「コミュニティが当たり前になった今、どう差別化していくのか」「支援会社としてのスタンス」「ゲームが長く愛されるタイトルになるために必要なこと」など、さらに深掘りしていきたいと思います。
(後編へつづく)
対談・構成

株式会社MOTTO
代表取締役 佐藤 基
2011年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社後は一貫してモバイルビジネスのマーケティングを担当。2018年に独立して株式会社MOTTOを設立。主にモバイルゲームやアプリのマーケティング戦略の立案と実行を支援。特にスマートフォンゲームのマーケティングは黎明期から現在まで10年以上経験し、これまでにマーケティングとして関わったタイトルは「逆転オセロニア」など100タイトルを超える。コミュニティマーケティングサービス「Rooot」も提供。2024年からゲームマーケティングに特化したビジネスイベント「GAME FUTURE SUMMIT」を主催。 2025年6月4日には「GAME FUTURE SUMMIT 2025」を開催予定。

株式会社NAVICUS
代表取締役 武内一矢
早稲田大学卒業後、コミュニティサービス運営のITベンチャーを経て、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。SNSマーケチームの立ち上げを担う。その後、ふるさと納税ポータルサイト大手「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンクでのマーケティング責任者などを経て、2018年、コミュニティ・SNSマーケティング支援を行う株式会社NAVICUSを設立、代表取締役に就任。2022年10月、九州を中心にWebマーケティング支援を行う株式会社NAVICUS九州のCMOに就任。

株式会社NAVICUS
コンサルティングDivision ドゥSection マネージャー 弐狐
株式会社KADOKAWAにて、アーケードゲームの公式プレイヤー兼、攻略記事制作に従事。
株式会社ディー・エヌ・エーでは、広報として社外向けのプレスリリースの制作に3年従事。また、SNS運用として、”人格運用”をメインに多種多様なキャンペーンの企画推進、顧客リレーション強化を目的としたプロジェクトオーナーを担当。
現在NAVICUSにて、ゲームアプリのSNS人格運用や人気TV番組のSNS運用を担当。
SNS運用の枠から飛び出して、演者としてゲーム内のCVを担当するほか、生配信やイベントにも出演している。